編集後記
 世間では盆休み真っ只中の8月14日、「平成17年度富士総合火力演習実施部隊編成完結式」が行われました。でも、既にスタンドや歩道橋は出来上がっています。聞けば総火演を実施するためには、前年の本番が終了した翌日から準備が始まるそうです。本番に向けて段々と準備され、かかわる人数が増えていくわけですが、その全員が会場の畑岡に集結するのが編成完結式です。

  演習実施部隊の富士教導団は、主要戦闘職種の普通科・特科・機甲科の相互協同を目標とした教育を行う富士学校の学生教育支援という任務を負っています。そのため、編成は小型の師団。装備は最新のものを保有しているのだそうです。それを持って、「学生に現代戦における火力戦闘の様子を認識させ、学生教育に役立てる」「陸上防衛にあたって、陸上自衛隊の持つさまざまな能力を国民に紹介し、陸上自衛隊に対する一層の理解と信頼を得る」というふたつの目的がある富士総合火力演習を毎年実施しているのです。

 ですが、編成完結式に集まったのは富士教導団の隊員だけではありません。北海道から九州までの18コの支援部隊もいました。会場の交通整理に富士学校の幹部隊員が、また会場広場のシート張りには事務官が借り出されているように、とにかく人が足りないことが現状ですが、支援部隊には、陸上自衛隊のメッカである東富士演習場での約2週間の富士総合火力演習は、良い経験になるのではないのかなと思いました。

 さて、今回は編成完結式から編成解組式までの約2週間、一般公開のされない宿営地や射撃陣地なども見させていただきました。

 宿営地は部隊ごとにあり、それぞれができるだけ快適に過ごせるように工夫されています。でも一つのテントを4人〜6人で使うのはどこも同じようです。テントには簡易ベットがありますが、官品では足りないのでほとんどが自分の物を持ち込んでいるそうです。ベットがあると雨が降ってもジメジメとしたところに寝なくていいですし、ベットの下に荷物が置けます、それに個人のスペースが確保できるのがいいのではないのかなと思いました。

 特科の射撃陣地は、演習前段の遠距離火力の展示の中、「ここでは会場広場の203mm自走榴弾砲及びFH70それぞれ1門の射撃とタイミングを合わせ、後方の陣地から中隊主力及び大隊主力が射撃し、三段山の中央に同時に弾が落ちるようにします」とナレーションされる「後方の陣地」です。ここは、会場からとても離れていてアナウンスも歓声も聞こえません。静かな中ひたすら命令を待ちカウントダウンで緊張が走り、すばやい動きで射ちます。次の弾の発射準備完了まで15秒。それが過ぎるとまた静かな時間に戻ります。

 風がそよそよと吹き過ぎて行くこの静かな時間には、野の花に目が行きます。ヘビイチゴ、サオトメバナ、ツリガネニンジン・・・。ふと、小川未明の「野ばら」という童話の、国境を挟んだ野ばらの下で将棋を指す老人と若者の兵隊のシーンが脳裏をよぎりました。
 何万という人が集まる総合火力演習の真っ只中であっても、ここはまったくの別世界のようです。きっと彼らには普段の訓練と同じなのでしょう。こんなふうに静かに過ごし、一瞬に集中しているのでしょう。